地球に帰還して直ぐの一週間は観察室に入り、宇宙から病原菌等を持ち込んでいないか、病気にかかってないかを検査し、三人とも問題なしということで自由になった。そこから更に三日間は、緑の惑星から採取した苔類や岩石の保存方法について研究班と協議し、またマスコミからも説明を求められたが、よく分からないということで通した。
その後、三人ともそれぞれ、待ち受けている家族や知人とともに、郊外の自宅に帰り、のんびりとした2ヵ月間を過ごし、再び勤務に戻り、一年後には大がかりな宇宙船団を組み、緑の惑星に住宅地まで建設し、何百人単位で生活しながら、惑星の探索を計ることになろう。
その先のことまで想像しかかるが、重過ぎて考える気もしない。
とにかく今は、妻子や友人達と共に、自宅や別荘地で過ごし、大自然の中でキャンプや釣りに興じることで悪夢を忘れようという思いしかない。いや、悪夢ではなく現実なのだ。しかし、アイザックもリチャードも本物そっくりで、記憶までコピーしているので、家族とも友人とも無難に過ごせていることだろう。逆に、私が全てを暴露したとしても、私の様子が変だという騒ぎになるだけだろう。
そんな風に、不思議な安心感を保ちながら、休暇が三週間を過ぎた頃、奇妙な出来事が世間を騒がせていた。
ニューヨーク郊外の銀行を三人組の強盗が襲い、拳銃で職員二人に怪我を負わせ、現金百万ドルを奪い乗用車を飛ばして逃げる途中、横断歩道の男性を跳ねバンパーに乗せたまま猛スピードで逃走を続け、予め乗り換えの車を用意していた倉庫内に逃げ込んだ。十五分後にパトカーが駆け付けたが、そこには二台の車と現金百万ドルと犯人達三人の無残な死体が転がっていた。その死体は、まるで大型の機械で何回転もねじ曲げられ潰されたかのように、人間の形を留めていなかった。辺りを見回しても、車二台以外に重機はなく、警察官達はハンカチで口を押さえながら、ただ唖然としていた。
いったい誰がこんな殺し方をしたのか、しかも、横断歩道で跳ねられ、倉庫内まで車のバンパーにしがみ付き、拳銃で頭を撃たれていた男性はどこなのか。
世間やマスコミは、この身の毛もよだつ怪事件を、謎とする他なかった。