「俺、割り切れますから」
その言葉を聞いて、さゆは半年前に付き合っていた優也を思い出した。会ってすぐに好きになり、初めて自分から告白した同級生の優也とは、付き合って1ヶ月で別れる事になった。口べたで、2人でいると会話がもたず、追いかける恋愛を初めて経験したさゆには、当たり前に好きだと言ってくれない彼氏が不安だった。だから結果的に、大事にする事よりも大事にされたい気持ちが強くなり、優也を追いつめてしまったのだ。
その優也が知り合ってすぐに同じ言葉を使っていた。
優也との出会いは、友達の彼氏の友達という、ごく単純なものだった。真っ直ぐに人の目を見て話す優也は、とても強く優しい人に見えた。その優也が、さゆと話をする時は少し目をそらして優しく笑う事が、さゆにとっては特別に嬉しくて、2人で会う約束をするまでに時間はかからなかった。「何人くらい彼女がいたの?」「俺、少ないよ。今までで2人。」確かに26歳で2人は少ない方かもしれない。「さゆちゃんは?」「…7人。何か軽い女みたいだね。そんな自覚ないんだけど」本当は10人目だった。「元カレと連絡とか取ってるの?」「うん、たまに着信あったら出てるかな。でも用件ある時だけだよ」