君だけを(12)

じゅりあ  2007-08-11投稿
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「下手くそだね…言葉が」

けどねアンタ、絵は上手いからわかるんだよ。

痛いほどに伝わってくるんだよ。

手が震える。

「井上…」

苦しかったんでしょ?

なのに私の事、描いてくれたんだ。

ちゃんと見ててくれたんだ…。

井上が私に残してくれた絵。
私はそれらを抱き締めながら…その場で泣き崩れた。




―八年後―\r
私は今、お墓の前で手を合わせている。

「今年から私、美術教師になったよ。さすがに画家は無理だったけど(笑)」
夢がなかった私も、井上に影響されて絵の勉強をしたんだ。

傍らに置いた紙袋から、“MIKOTO INOUE”と書かれたスケッチブックを取り出して触れる。

「あの頃の私、こんな顔してた?」
井上が描いた私の顔。
見たら泣きそうになるけど、アンタの前ではこの笑顔でいたい。


ねぇ、井上―\r

いつかさ、

私が天に召される時が来たら、また…

アンタの絵

私に見せてよ。

それで今度は

アンタの笑った顔が

見たい。


時間かかっても

アンタのとこに行く。

だから

それまでは…


「待ってて…!」

私は背を向け歩き出した。
スケッチブックを握り締めて―\r

END

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