航宙機動部隊第三章・46

まっかつ  2007-08-11投稿
閲覧数[432] 良い投票[0] 悪い投票[0]

強引な工作の裏には、当然それを指示した人間がいる。
その面だった面々についてリク=ウル=カルンダハラは大方の見当は付けており、同時に感謝なんかしなかった。
(連中からすれば試練でも与えた積もりなのだろう。否、試験かなこいつは?)
仮に公職者コースに入ったからと言って、少年にはさして巨大な理想や野望がある分けでも無い。
精々与えられた境遇や条件を利用して、機動部隊の士官になり、中央域に【上京】して、文明の尖端とやらを見れれば充分お釣りが来る―本人にはその位の考えしか無かったのだ。
それが今や―リク=ウル=カルンダハラは自嘲せざるを得なかった。
お釣りどころか完全にハメられてしまったな。
巨大かつ堅牢・そして複雑にして無数の思惑が交錯する国家機構に―\r
見方によっては太子党との争いすらも、自分の資質を検証する壮大なテストの一環だったりしてな―\r
少年はそこまで邪推した。
確かに本国のしたたかさは、星間諸侯ですら手玉に取り幹部候補生の教材にする位やりかねない。
少年な新年期明けの公務をあらかたすっぽかしていた。
一応は外交官だから、最外縁征討軍の会議だの交流だの儀礼だのに顔を出さなければならず、更に自分からも各国要人に【営業】の一つもしなければならない筈なのだが、少年は潔いまでに全てをシャットアウトしてしまっている。
フーバー=エンジェルミ一味に良い様にやられ放題の上層部は周章狼狽・右顧左眄するばかりで今だまともな対策も決断も出来てない。
少年はとっくに彼等を見切っていた。
先方も本当に混乱しているらしく、別段クレームも来ていない。
それに、代役としてテンペ=ホイフェ=クダグニンが動いてくれている。
彼女の見識・弁舌は、ティヴィタヴェキアでの討論番組で実証されている。
おまけに職業柄、人並み以上の演技もお手の物だ。
リクとしては嬉しい誤算だった。
現在彼等はこれまでの経緯上、太子党の―フーバー=エンジェルミの敵意を間違い無く買っており、あの若き暴君が二人に魔手を伸ばして来るのは時間の問題だったろう。
だから彼女を外に出すのは危険だったが、幼児を喰らい核まで使う相手との闘いを決めた以上、安全な場所等もうどこにも無いのだ。
ムハマド=ハザイ大佐と連絡を取り、彼女には特に厳重な警備を付ける様に頼んである。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 まっかつ 」さんの小説

もっと見る

SFの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ