真樹が水割りを作ってくれていたが、まだ指名者らしく振舞えない自分がいた。
美紀もゆうこも酒が強い。
飲むペースも上がってきて、酔いも回ってきたようだ。
緊張の糸がほどけてきたのかよくしゃべるようになってきた。
俺は美紀が自分達の仕事の事をばらさないかとヒヤヒヤして聞いていた。
みんなにボロがでる前に早く帰したほうがいいなと思っていた。
どちらにしてもヘルプとして忙しくなる前に美紀達を帰さなくてならない。
もうすぐ忙しくて席に座れなくなるということを説明して美紀には帰ってもらうことにした。
美紀はせっかく楽しくなってきたところなのにと酒の勢いも手伝って文句を言う。
俺は、ゆうこを客にする為なんとか説得して帰ってもらわなくてはならなかった。
先輩が出勤して席に着く前に。
ゆうこを客として、とられる前に。
美紀達が店に来てからずっと俺は、どうやってゆうこに連絡方法を聞きだすか考えていた。
そんな時美紀がトイレに行く為、席を立った。
その間に俺はゆうこの連絡場所を聞き出した。
美紀はたまに音信不通になるから、美紀の連絡先を聞く為、ゆうこに連絡していいか、というなんとも苦しい理由で聞き出したのだ。
ゆうこは少し変に思ったかもしれない。
連絡場所を聞いたことを美紀に内緒にしてくれということも疑問に思ったかもだ。
頭のいい女なら薄々俺の企みを感じていたかもしれない。
ゆうこもその企みにわざと乗って教えてくれたのかもしれない。
トイレから帰ってきた美紀は何も疑いもなく座って飲み続けた。
俺とゆうこは、何故か目が合ってお互いに含み笑いのような表情をした。
仕方なさそうに美紀は帰る支度をしてゆうこと帰っていった。
俺は帰り際のゆうこの笑顔で何となく脈ありと感じた。
美紀はたまに店に来てくれればいい。
この後、ゆうこは俺にとって男として成長する大切な女になる。
二人を帰してからはいつものようにあわただしいヘルプの時間が始まった。