私はすぐにアイザックに電話してみたが、違うと言うので、次にリチャードにかけてみた。すぐに答えは返ってきた。
「仕方がなかったんだ、ジョセフ。あのとき、そのまま奴らを生かしていたら、俺が人間から元の姿に戻って、撃たれた全身を治癒する姿を目撃されただろう。」
私には返す言葉が無く、ただ「そうか。」とうなずいて、電話を切った。
だがこの話はこれだけでは終らなかった。数日後、三流新聞の第一面には信じ難い見出しが踊っていた。
『巨大植物が、三人の銀行強盗を、潰れるまで絞め殺した!目撃者ミラー氏、詳細を語る!』
記事に因ると、横断歩道で銀行強盗の車に跳ねられた男は、その車にしがみついていたために、走る車の窓から犯人達に、少なくとも30発の弾丸を主に頭部に受けたが、そのままバンパーに足をかけボンネットに上体を密着させていた。
車が倉庫内に入り急停車した。ここからは、この倉庫の片隅に隠れて寝ていた、浮浪者ミラー氏の目撃談だが、車の上から地面に落ちた男を、犯人達がトドメを刺そうとした瞬間、その血まみれの体は深緑色の塊に変わり、それはすぐに大木の様に立ち上がり、幹からは無数の太い枝が伸び、その枝は大蛇の様にくねくねと動きだし、犯人達の首や胴体に巻き付き、肉に食い込み全身が潰れるまで絞め続けた。その後すぐに、大木は傷一つない人間の男の姿に戻り、倉庫外に走り去り、それから約十分後にパトカーが入って來たというのだ。
ミラー氏はその場でニューヨーク市警に身柄を確保され2日間取り調べを受け、その後FBIに身柄を移送され3日間取り調べを受けたが、話が余りに現実離れしているため放免された。そこに、三流新聞が飛び付き、ミラー氏の語るままに、派手な記事を掲載したのだった。
この記事に世間の反応は半信半疑だったが、連邦警察の捜査は続いていた。