少しキツメのお線香の香りが部屋中に広がっている。
皆は泣いている。悲しくて哀しくて崩れ落ちてる人が何人もいる。
それもそうだ…
私の目の前には、
私の姉貴の亡骸がある。きちんと寝かせてある。
が、
私にはただ無造作に置いてあるにしか見えない。
『何で涙が出ないのだろう。何で泣かないの??』
悲しいなんて、私には分からない。
今本当に姉貴が私の側から居なくなったのか。
実感がわかないとはこういう事なのか。
『未来!!早くしなさい。』
順番をまっている後ろの奴等を見て、母は小声で私に言った。
母が小声だったのは別に場所を考えて声を小さくしたんじゃない。
昨日の夜、これまでにない大声で泣きわめいていたからだ。
現に母の声はかすれている。
私は何も言わず席に戻った。
聞きたくないお経が聞こえてきた。
とても長く感じた。
姉貴の学校の人達は未だに泣き崩れている。
私はやっと だんだん分かってきた。
何故今こんなに長いお経を聞いて、皆と違う席に座っているのか、
何故今こんなに女の子達が泣き崩れているのか、
何故今こんなに母の声が枯れているのか、
私は後悔で
冗談抜きで
殺されるかと思った。
今はいている制服のスカートがシワクチャになってしまった……