男と俺は未だに沈黙が続いている。
もう一度ノックをしてみる…
『お前まだいたのか!?消えてくれって言ってんだろ!!』
男のこの言葉がやけに俺を悲しくさせた。
『……そんな事を言われたのは生まれて初めてだ…。あぁ、どうしよう、悲しすぎて泣きそうだ。』
俺は何故か流れ出す涙を抑えながら男に言った。
慌てた男は、
『ラフ・メイカー!?冗談じゃない!アンタが泣いてちゃ仕様がない。泣きたいのはこっちの方だ!』
ドアの側で座り込む二人。泣いている理由は違うが、泣いていることには変わりない。
時間が過ぎていく……
膝をかかえている二人の泣き声は、すっかり疲れ果てている。
男が静かに言った。
『おい、今でも俺を笑わせるつもりか、ラフ・メイカー?』
『……それだけが生き甲斐なんだ。笑わせないと帰れない。』
こうなったら、強制的に行くしかないな、鉄パイプを手にとる。
裏口なら……
覚悟を決める。
俺は小さな鏡を持って窓ガラスを割る。
驚きながらコッチを見る男。
泣き合っている男二人が同じ部屋にいる……。
泣き続けている男を笑わせないと……
『お前の泣き顔笑えるぞ』
鏡を男に見せてみる。
簡単な方法だが、男は静かに笑った……。