航宙機動部隊第三章・47

まっかつ  2007-08-13投稿
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庭から木漏れが日差し込む自室で、リク=ウル=カルンダハラは唐机に広げたホログラム=キーボードを打ちながら、必要な仕事の最後の作業に取りかかっていた。
やるべき事は沢山ある。
まず辞令受理のむねを中央域方面にある祖国出先機関に宛てて返信し、併せて現在会議に出席中のテンペ=ホイフェ=クダグニンに彼女の新たなるポストについて伝える。
リクはこれまで八時間以上、休む事無く働き続けていた。
中々の勤勉振りだが、その動機と目的の大半は公事ではなく私事に基づく物だった。
打ち込み中のメイン画像とは別に、成りたての総領事はパネルカードからもう一つ平面ホログラムを展開していた。
それには首都星ティヴィタヴェキアに『御降臨』遊ばした、現人神こと太子党の総師・フーバー=エンジェルミ公子が、オストレスタジアムに置ける核地雷テロの被害者や遺族達をスタジオに招いて畏れ多くも有難い御言葉を親しくかけられる、そんな番組が写し出されていた。
星間諸侯系の企業が多数、スポンサーとなり、豊富な予算の下、パレオス星邦のみならず全銀河ネットで流しているみたいだ。
一応放送元は当地のパレオス中央通信社だが、この会社自体が、既に中央域のギャラクシーキャスティング&ブロードバンド社の傘下に組み込まれ、系列企業化されてしまっている。
もう、祖国や同胞の人権や利益の為には動けない筈だ。
でなきゃこんな星民感情を逆撫でする番組等造れる訳がない。
フーバー=エンジェルミは良い気なものだった。
悲嘆に暮れる被害者達の手を取り、慰め励まし、共感と親愛の情を示しながら、何と彼等全員に一時金や見舞金を下賜するとのたもうたのだ。
その後は更に酷かった。
この国を代表する俳優・アーティスト・芸人・スポーツ選手達が一堂に会し、大量殺戮者を持ち上げ、賛美し、へつらいおもねながら共に『美しい国』を創ろうと誓い合いながら、シテ市街に繰り出し、重要機関や観光名所・歴史的建造物を様々な乗り物を使って物見遊山し、最後に辿り着いたのがあのオストレスタジアム―\r
《諸君。私の望みは破壊ではなく創造だ。この廃墟は言わば産みの苦しみ―犠牲者達はその為の殉教者だ》
焼け崩れ、ただれたままのメインゲートを背景に、若き暴君は随従者達にそう理念をお垂れになった。



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