Reborn ― 1990・3

朝倉令  2006-03-10投稿
閲覧数[898] 良い投票[0] 悪い投票[0]

「おねーちゃん、フレデリック(ショパン)さんのとこ行かない?」

天国にすっかり馴染んだアタシは、今日もひいひいお婆ちゃんのサヨさんを誘いにいった。

「おや、しーちゃんかい?また新作を聴きにいくんだね。 お前さん、本当にピアノが好きなんだねェ」

ひいお爺さんを出産した後、産後の肥立ちが悪く若くして亡くなったサヨさん。 当時は珍しかった写真にセピア色で写っていた人物とこうして会話が出来るのも、ここ、天国ならではのこと。

クロガネさんから聞かされていた通り、性格がアタシと良〜く似ており、実の姉妹の様に気が合った。

「あたしゃ芸者だった所を旦那に拾われたクチでね。 西洋の音楽はチンプンカンプンだったけど、ショパンさんのピアノは優しい音色が心地よいね」

アタシは、サヨさんとご主人の平エ門さんに幕末当時の話を聞かせて貰ったり、遊園地のジェットコースターで一緒に目を回したり、という感じで妹の様に可愛がって貰っている。
 その時、不意にノクターンの新曲が鳴り響いた。


「クロガネさんかな?」

アタシはポケットからケータイを取り出すと、画面を覗き込んだ。 これは希望すれば支給され、21世紀では子供でも持っているとの事。


「あ、詩織さんですね?
ご無沙汰してます、クロガネです。 早速ですが、明後日がreborn(再誕)の日になりますので、直接お話する事があります」

 いよいよか ……





投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 朝倉令 」さんの小説

もっと見る

ファンタジーの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ