「あの死神ルックはやめちゃったの?」
挨拶の後、アタシが尋ねるとクロガネさんは苦笑していた。
「あのコスチュームはですね、死者の皆さんに自分が死んだという自覚をうながすために …… まァ良いですが、相変わらずこちらのペースを乱してくれますねェ」
ドレープの様な薄物をまとったクロガネさんは、これからアタシが生まれる家の事を説明してくれた。
「偶然って訳ではありませんが、以前恋人だった朝倉令さんのお向いなんですよ。 あなたの新しいご家族がたまたまそこに引っ越したという設定で。 ま、ぶっちゃけた話、お詫びの意味合いも兼ねてそうチョイスしたんですけどね」
また会えるんだぁ……
アタシは、にわかに胸が高鳴り始めた。
「淋しくなるけど、また会えるからね。 第二の人生もしっかりやっとくれ」
サヨさん、フレデリック(ショパン)さん、フランツ・リストさん等、ここで親しくなった人達に見送られながら、アタシは元いた世界へ旅立っていった。
2005年、10月
「う ―― … ん …あ!もうこんな時間!!」
ベッドから跳ね起きた私は、大急ぎで洗顔と髪のセットを済ませ、テーブルの上にあったトーストを手にとった。
部屋に戻って着替えながらパクついていると、一部始終を眺めていたママが呆れた顔で立っている。