翌日―\r
早めに登校していた梅城ケンヤは会長室で朝食を取っていた。
そこへ―\r
コンコン
ノックの後にドアが開くと―\r
『私です。会長』
一人の女子生徒が入って来た。
そして、ご飯に味噌汁、鮭の切身、納豆にお茶と言う実にオーソドックスな和食が広げられている机の前に進むと―\r
『これは、お食事中でしたか―申し訳ありません』
彼女はそう気を使って見せた。
『ああ、いや構わんよ。あいにく君の分は用意してなかったが―まあ楽にしてくれ』
梅城ケンヤはハンカチで口を拭いながら、彼女に向かいのソファーを進めた。
巻き上げられたブラウンヘアーに青い目。
日本人離れをした美少女だが、確かに彼女はハーフだ。
港リリアはこの学校の副会長―ナンバー2だ。
先の選挙では惜しくもケンヤに敗れ、会長にこそなれなかったが、有能にして信頼出来る補佐役として、【梅城政権】内でも重きをなしている。
若手だらけの現生徒会で数少ない2年生として、梅城ケンヤにもどしどし諌言し、時として激しく意見を闘わせる事もある。
だがそれが生徒会の腐敗・会長の独走を防ぎ、良い意味で緊張感を保っている―\r
一般にはそう思われていたし、改革を掲げるケンヤからしても、オープンなイメージを保つためには確かに彼女みたいな幹部は必要だった。
間もなく朝食を平らげた生徒会長は、お茶をすすりながら、
『おはよう。今日は早いねえ。報告かね?それとも請願かな?』
副会長はソファーに腰を下ろし、出されたペットボトルを手に持ちながら、
『報告です。それも朗報です』
屈託のない笑顔を見せた。
『まだ非公開ですが、昨日の処刑の後で実施されたアンケートで、会長の支持率は95%を越えました』
この学校始まって以来、これは最高記録だ。
だが―\r
『いや、困ったなそいつは』
ケンヤは片手を額に当てて嘆いて見せた。
『まるで独裁者じゃないか。強制した分けじゃないのに―もう少し反対意見も出ないと、健全な生徒会運営は出来ないよ』
事実独裁者だ。
そして、これからますます独裁者になって行くつもりだ。
だが、物事には順序がある。
今ここで本心を、そして計画を明らかにする分けにもいかず、ケンヤはせいぜい呑気なお人好しを演じるしかなかった。