緑の惑星.7

金太七耕助  2007-08-17投稿
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 銀行強盗の一件以来何事もなく、あの新聞記事の記憶も、次第に人々の記憶から遠ざかっていった。
 あれから一ヵ月近く経った深夜、別荘の電話が突然鳴った。航空宇宙局からで、あの惑星から持ち帰った苔のサンプルが盗まれたというのだ。現場には研究員が倒れていた。八個の苔が全て持ち出されたということだ。しかも、研究員は、無傷で仮死状態にあるという。
 私は、とっさに、自分自身が緑の惑星で、緑色の怪物に襲われたときのことを思い出した。緑の惑星から採取してきた苔も、緑惑星人なのだ。彼らが、研究員を襲い、遺伝子と記憶をコピーし外に出たのだろう。研究員になったのは一人で、その研究員が残りの七つの苔を持ち出したのだろう。
 本当のことは言わないかも知れないが、アイザックに連絡をとり話を聞いたところ、
「恐らく、研究員に化けた苔も他の苔も、野外に出て、他の植物に化けて固体を成長させ増殖しているだろう。」と答えた。
仮死状態の研究員については、「一日経てば意識は戻る。しかし、襲われた当時の記憶は消されているはずだ。」と答えた。
 事実、翌日になって研究員の意識は戻ったが、前日の記憶はなかった。
 この事件は公表され、世界の話題に上ったが、何故あれほど強固なセキュリティーシステムがいとも簡単に破られたのか、また研究員を仮死状態に陥れる薬品は何なのかという謎は深まるばかりだった。
 この間にも、事態は刻々と変化していた。苔からアメリカ南部の動植物に化けた緑惑星人は、増殖の早い浮草やゴキブリやネズミ等選び、次々と種族を増やしつつあった。人の目には分からないが、一週間でフロリダ全域の野性の動植物のほとんど全てが緑惑星人に入れ替わっていた。
 勢いは止まらず、一ヵ月で、南北アメリカの大半の野性植物と小動物や昆虫類がコピーされたものに入れ替わってしまった。
 アメリカから他の大陸に移るのは、人に化けて航空機で移動すれば簡単で、今や、彼らの手法で全世界の動植物に入れ替わるのは、時間の問題である。

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