隆太はピクナーと喧嘩をした次の日も公園に行った。今さら公園に行かないのもなんだし、ピクナーに謝ろうと思っていた。
いつものようにブランコに座る。遊んでいる子供、日陰で立ち話をしている親、そよそよと揺らぐ木々の葉。いつもの風景だ。しかし、ピクナーがいない。いつもなら、ブランコに座っていれば勝手に寄って来るはずなのに……。
ピクナー、昨日の夜の事で怒っちゃったのかな。もう、来てくれないのかな。
心の中に不安が過る。まだ会いたいのに……謝りたいのに……。
頭の上にぱさっと何かが落ちてきた。隆太それを手に取った。木の葉で作られた冠だった。さっと後ろを振り向く。そこには恥ずかしそうにピクナーが立っていた。
「ピクナー、来てくれたんだ……」
『当然。あの、昨日、相談に乗らないであんな酷い事言って、ごめん。隆太の気持ちも考えないであんな事を……だから、その冠はお詫び』
「ありがとう。僕だって悪かったよ。馬鹿とかそんな事言って。勝手に夜に押しかけて来て怒って帰っちゃってさ。あの時はどうかしてたよ」
隆太とピクナーは笑い合った。それは仲直りのサインだ。これからも友達だと言うサイン。
隆太は木の葉の冠を被った。
「じゃあ、昨日の続き。いいかな。公園をなくさないようにするにはどうしたらいいだろう。僕、帰ってからも考えたんだけど、何も思いつかなかった。やっぱりピクナーの力が必要だよ」
『う〜ん、署名を集めるとか』
「誰からさ?」
『この公園に来ている人とか……』
「無理だ。ここの人達は僕を嫌っている。協力なんかしてくれないよ。近寄っただけで逃げていくんだもの」
ピクナーがくっと息を呑んだ。隆太がふぅと息を吐き出す。しばらく沈黙が続いた。
「もう、無理なのかな」
隆太がボソッと呟いた。限界という言葉が隆太の頭に浮かんだ。
『な、なに言ってんだよ。公園を潰されたくないんだろ?諦めるなっ』
ピクナーが苛々した様子でブランコの鎖を叩いた。
『何かあるはずなんだ。何か……』
隆太が俯く。ピクナーは唇を噛み締めていた。
「もういいよ」
隆太が言葉を発した。ピクナーがのそりと顔を上げた。
「諦めよう。僕達じゃなにもできないよ。ごめん、せっかく考えてくれたのに」
ピクナーも認めたらしく、何も言わなかった。この日はそこで解散した。