サラサラの髪に、眼鏡をかけて、スーツ姿が“出来る男”って感じ。
特別、男前って訳じゃないけど、何より笑顔が彼の優しい人柄を証明してる。
「いいなぁ…」
机に頬杖ついてると…
「何が?」
「ひっ!!?」
振り返るとそこには課長の顔。
「驚かさないで下さい〜」
(わぁ、心臓バクバク)
「そんな事より、これコピー」
課長から手渡された書類の数々。
「枚数は、書いてあるから指定どおりに。それと…
あんまりサボってるとコレね」
“クビ”
課長のジェスチャーですぐにわかった。
「はぁい」
私は立ち上がるとコピー機のある五階へ移動した。
(課長め…脅しに出たわね)エレベーターに乗り込むと、携帯が震えてるのに気付いた。
電話。
しかも元彼、梓からだった。
(せっかく忘れようとしてんのに…)
別れ際、何度も引き止めようとしてた梓の顔を思い出した。
無視だ。
私はもう、未練なんかないよ。
だって、三浦さんがいるもの。
梓より、ずっと大人だし優しい。
それに多分、浮気とかするタイプじゃない…筈…。
(これだけは言いきれないな…)
だって、梓だって始めはそんな事すると思わなかったもん。