「ピクナー、何でお前だけいなくなるんだ……」
きっとピクナーが魔法を使ったんだ。自分の命と引き換えに……。
ピクナーが自分のために命を捨てたんだと思うと隆太は悲しくなった。ピクナーはこの公園が潰れても、違う公園に住めばいい事だった。ピクナーが消える事なんてなかった。自分のせいだと隆太は責めた。
ポケットの中に手を入れる。石にはもう用がない。捨てるつもりだった。
隆太は石を投げようとして手を止めた。ふと思い、石を見詰めた。
願い事を言ってみようか。
右手に石を握る。隆太の願い事。それは……
「ピクナーを生き返らせてください」
そう言ってから目を伏せる。しばらくそのままじっとして、目を開けた。何も起きていなかった。
僕の本当の願い事って何なんだろうな。
草むらに石を投げた。ふぅ、と息をつく。
『石を投げたら危ないだろ』
一瞬、心臓が止まるかと思った。後ろを振り向く。ピクナーがニヤついて宙を飛んでいた。
「ピクナー!消えたんじゃ……」
『隆太が生き返らせてってお願い事したんじゃないか』
「石の事、知っていたのか?」
『うん、だってあれは俺が置いたんだから。本当はあの石で公園を救って欲しかった。隆太の本当の願い事じゃないなんて思いもしなかった』
「それでしかたなくピクナーが……」
『ま、そういう事』
「じゃあ、僕の本当の願い事って……?」
ピクナーが照れ臭そうに笑った。
僕の本当の願いはピクナーとずっと一緒にいること。ずっと友達でいること。
自分でもこんな心があるなんて知らなかった。自分の心もきちんと自分で分かっていなかった。
『ありがと、隆太』
ピクナーが言った。
「ありがと、ピクナー」
隆太が言った。ピクナーの手と握手をする。
「これからも友達。な?」
『当然』
ピクナーが嬉しそうに笑った。その笑顔は太陽よりも輝いていた。
END