「あ〜退屈」
正木 亮輔(まさき りょうすけ)はため息をついた。亮輔にとって学校の授業など意味がない。帰ってから教科書をパラパラと見るだけでこんな簡単なもの理解ができる。
しかし、中学は義務教育だ。まだ中一になって一ヶ月だ。あと三年もずっとこんな暮らしをしなくちゃいけない。退屈。
「正木。聞いているのか。中間テストでどんな点取っても知らんぞ」
「あっそう。どんな点取るか楽しみやなぁ」
足を組み、運動場を見る。先生の顔が赤く変わるのが見なくても分かる。
「正木っ、なんだその態度はっ。入学したてでそんなにダラけてたら三年になったらどうなるか分かってるのかっ」
「入学したてじゃなかったらダラけてもいいワケ?」
亮輔は先生の顔を見た。
なかなかの熱血教師やん。
くすっと笑った。先生の顔が次は青くなるのが分かった。
「な、何を笑っているっ。ま、ま、正木、放課後に職員室へ来いっ」
そういうと教壇に戻って行った。
「正木ぃ」
中岡 大地(なかおか だいち)が来た。大地は中学に入って初めてできた話し相手だ。亮輔は大阪から引越してきたので知っている人など一人もいなかった。
「放課後呼び出しだろ。待っとくよ」
「は?行くわけないやん。はよ帰って俺ん家来てな。昨日のゲームの続きしよう」
そう言うと亮輔はスタスタと歩きだした。大地は唖然としながらも、感心していた。
ちょっとカッコイイ。
そう思った。なんか縛られないって感じだ。
「うん、帰ったらすぐ行くよ」
大地はそう言いながら亮輔に追い付いた。亮輔はにっこりと笑った。そんな時、大地は少しドキドキする。ホモってわけではない。亮輔のような顔が笑えば男だって振り向く。
「どうしたん?」
「いや、ホント、正木ってオトコマエだよなぁ。いつ見ても惚れる。羨ましい」
「キモいやっちゃな。俺、男と付き合うなんていややからな。絶対、女の子と付き合うからな。ファーストキスだって女の子とやるからな」
「お、お前、キスの事まで考えてるのか。やるなぁ」
亮輔は真っ赤になって帰るで、と言った。大地がふふっと笑う。
「うん、帰ろう」
大地は亮輔と並んだ。やっぱり正木はおもしろいと思った。