時計の針がちょうど十一時を刺した頃、次々と部員達は解散し始めた。
梨湖、陽、咲麻、愛音もそのうちの一人だった。
辺りは、ポツリ、ポツリと電灯があるだけで、一人で帰るには少々心細い道であった。
はじめは驚きを感じていただけの梨湖も、外の様子を見るなりほかの人がいることに安心を感じた。
四人は五分ほど無言の時を過ごした。
その五分の沈黙を破ったのは、咲麻だった。
「あー！もうっ！なんか話そーよ。」
普段から、周りにはお調子者、楽天者として扱われている咲麻にはこの沈黙は耐えられなかったのである。
「じゃあさっ、私、梨湖ちゃんに質問！」
そう、梨湖ににっこりと微笑んだのは愛音だった。
吸い込まれそうな黒い瞳によく似合う、長くまっすぐなロングヘア。
美人、まさにそれだった。
「えっ？なんですか？」
梨湖は、愛音の美麗さに目が離せずにいた。
「突然だけど、こいつ！陽のこと覚えてる？」
愛音は、ちょっといたずらに微笑んだ。
「陽って･･･、佐伯先輩ですか？えっと･･･、すいません、会ったことありましたっけ？」
梨湖は戸惑いを隠せなかった。
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