いかにも純粋培養された天然ボケ・典型的お嬢様―\r
九重モエに与えられたそんなイメージの恐らく半分は正解だ。
だが―\r
『いつかはそうしたいと―思ってるよ』
彼女に対する時、梅城ケンヤはどうしても歯切れが悪くなってしまう。
『とにかく、いますぐ止める分けには行かない。仮にそうしてもまたイジメグループはつけあがる』
《梅城会長は【目には目を】で全てが解決すると本当にお考えなのですか?》
モニターの中で真っ赤なリボンが激しく揺れ、九重モエはふくれっ面をして見せた。
《それとも報復を…復讐がお好きなのですか?》
『そ…そうじゃない』
図星を突かれて、ケンヤはまともに冷や汗をかき始めた。
そして―\r
(くそっ、こんなヤツに、こんなヤツに命を助けられさえしなければ)
そう―\r
九重モエは確かに、梅城ケンヤの弱味を握っているも同然だったのだ。
『共に改革を誓った仲だ。ただやり方が少し違うだけであって、より良い学校を創ると言う目標は変わらないさ』
しどろもどろに弁解しながら、ケンヤは思い起こすのだ。
生徒会長に就任を果たした直後だ。
近隣の中学・高校の会長達の集会が催されると聞き、当然彼も出席するべく、貸し切られた区民文化センターに向かったのだ。
だが、途中でケンヤは敗れた対立候補の差し金で、辺りの不良に囲まれてしまった。
相手は20人以上はいた。
ケンヤは死を覚悟した。
少なく共、逆恨みに燃える政敵からすれば、二度と学校に来れなくなるまでケンヤを徹底的に痛め付ける位は狙っていただろう。
そこにたった一人で乗り込んで来たのが―\r
そう、彼女だ。
確かに九重モエは名門のお嬢様育ちだった。
だが、多少違う意味に置いてだ。
彼女の実家は伝統ある武道の家柄だったのだ。
大きなリボンが華麗に旋舞するたびに、狂暴な少年少女達は次々と投げられ、倒され、ねじ伏せられ―\r
物の五分で、不良集団は壊滅させられてしまったのだ。
これが梅城ケンヤと九重モエとの最初の出会いであった。
はなから命を救われたのだから、ケンヤの頭があがる筈がなかったのだ。
しかも、ただの一生徒ならいざ知らず、立場は同等にして主義は真逆なのだから、やりにくいことこの上ない。