プロローグ 漆黒の闇
藍染の胡蝶 山奥にある寒村、翡翠村に叫び声が響き渡ったのは、ある新月の夜のことだった。
「村長とこの家から聞こえたぞ!」
「智也と黎明だけは助け出さねぇと!」
村人たちが急いで現場へ向かうと、そこには、
男女の死体と、重傷を負った少年の姿があった。
「智也っ!」
村人たちが駆け寄ると、少年は、微かに目を開けた。そして、掠れた声で、言った。
「黎明が・・・連れ去られた・・・。早く・・・・・・助けないと・・・・・・っ!」
そして、がくりと気を失った。少年は、左目を潰されている上、背中にはひどい斬り傷がある。すぐに治療をしなければ、命が危ない状態だ。
「とりあえず、智也を救おう!」
村人たちは、智也を運んだ。
その夜。
夜の闇の中、藍染の着物を身に纏った男が、智也の元に訪れた。
「・・・あばよ。二度と表の世では・・・・・・生きられんだろうよ」
漆黒の闇の中、藍染の胡蝶は、笑いながら去っていった。
まるで、
夜叉のように。