「ただいま〜」
「あぁ、お帰り。」
僕が、ここ下界に来てから、2年が経とうとしている。
「足の様子は、どうだい?痛むかい?」
「うん、まァ…でも、今はまだマシかな?」
僕は今成長期というヤツを迎えていて、その著しい身長の伸びが、成長痛となって僕を苦しめている。まぁ、良い事に違いは無いのだが。
「シェルマンさんの所のニード君、会う度に背が伸びるねぇ。つい1週間前に会ったばっかりなのに…」
ニードもそうだが、僕らの年代の子供は皆、ここ最近急に背が伸び始めた。
おやつにマリア特製のクッキーを食べて、
「じゃあ、ニードと約束があるから。行ってきます。」
「あぁ、行ってらっしゃい。」
いつもの丘に行く。
あの日、ニードと笑いあった、丘へ。
丘の上の一本のポプラ。の、下。そこで待ち合わせる事になっているが、
「まだ来てないのか…」
ニードは居なかった。
というのは嘘で…ルイの背後、ポプラの木に逆さ吊りになって現れましたよ。ちょいと、君、ニヤニヤが止まってないよ。
「わっ!」
「ぅああッ!?」
心臓が口から飛び出さんばかりに驚く。
「っへへ〜お前まだ心臓弱いのな。俺がこーして鍛えてんのに。」
「何が『鍛えてんのに。』だよッ!ただ単に脅かしたいだけでしょうが!!」
「まァな〜今のビックリ何点?」
「45…」
「嘘つけ」
他愛もない会話。時々退屈に思えるこの日常は、やはり大切なもの。
「なァルイ!見てくれよコレ!」
ニードは嬉々として僕に詰め寄る。
バササッ
真っ白な羽毛が舞う。ニードの背中の翼は
「なァほらっ完治したんだ!もう動かしても全然痛くない!」
見事なまでに美しかった。
「…すごい……」
僕はただただ見とれていた。
「“見せたい物"って…これ?すごい…良かったねニード!これで人に見られさえしなければ、空を…」
途端に僕の背筋を悪寒が走った。