武藤はこの真夏なのに極寒の部屋に入りたくなかったが、「まぁ立ち話もなんですし」という桜杯のセリフと腕を引っ張る力に負けて入室した。
わぁ。寒い。
なんだろう、冷蔵庫かなぁここ。
あ、節々がぎしぎしいう。そんなふうに逃避行する思考の中、桜杯が笑顔で、 「今日はちょっと暑いですねー、クーラーもう少し下げますか?」
と呑気に空調のリモコンを取り出す。
武藤はなんとなく『あ、これは危ない』という野生の勘が働いた。下手したら凍死も冗談ですまされない。「いいから!いいから本題にいこう!!早く僕聞きたいなぁ!!」
「えー…そうですかぁ?でも僕暑「ね!いいからさ!!」
妙な迫力をもって桜杯を脅す。渋々彼は持っていたリモコンを置いて、氷のたっぷり入った麦茶とコースターを眼前に置く。
いまさらながら彼の神経は狂っている。