「んーっ、そおだね…」
私は生返事をすると、テスト範囲をまとめたプリントに目を落とした。
今朝、夢に出てきたもう一人の私が『しおり』って言ってたよね?………
授業は頭に入らず、素通りしていった。
休み時間、名刺のアドレスにメールを打ってみる。
文面〈おはちゅ。 お向いの山内由美だよお。朝の話わどゆこと? メエルよろ〉
すぐに返信がきた。
文面〈今朝はゴメンね。 少し尋ねたい事があるから、放課後迎えに行っていいかな? OKならメール返してくれるかな? Rei〉
妙に興味を引かれていた私は、速攻で『OK』と返信しておいた。
「すっげ!マセラッティじゃん」
校門の近くまでクラスメートの正木優奈と喋りながら歩いていくと、男子達の声が聞こえてきた。
ダークカラーの車を囲む様に、オーナーらしき男性と学生服の男の子達が歓談している光景が見て取れる。
私に気付いた男性は、笑顔を向けてくる。令さん?
「や、学校まで押し掛けて申し訳ない。 これから時間、大丈夫かな?」
「優、ゴメンね〜っ、先約アリだったんよ」
助手席の窓を開けて貰い、あっけに取られた表情の優奈に謝った後、ちょっぴりHなムードの内装に包まれたまま、私は校舎を後にしていた。
……変な事されたりは… しないよね?
外観とはうらはらの、超豪華な内装に囲まれた私は、ほんの少し後悔していた。