幸助は階段をあがり、兄さんこと、羽田野大助(はたのだいすけ)の部屋の前まできていた。舞は、一階のソファーでくつろいでいた。
部屋にノックをして、応答を待つ。数秒で返事がかえってきた。
「幸助だけど、入っていい?」
「幸助?きてたのか」
この返事の意味は、入っていいということだろう。もう一度ノックをしてから中へ入った。
「久しぶりだな。まさか幸助に先をこされるとは、思ってもいなかったよ。」
一応、祝福の言葉ととっていいのだろう。
「兄さん、絢さんとはうまくやってんの?」
絢とは、大助の彼女だ。本名は、大城絢音(おおしろあやね)といい、少々色っぽい人だ。
「今日、絢音もくるはずだよ」
「どうもありがとうございます」
ゆっくりとした口調で話した。少し機嫌をそこねたかもしれない。
「まあ、そういうことだから。で、俺に何の用だ?まさかここまできて結婚したくないとか言うんじゃないだろうな」
自分の本心をズバリあててきた。だが今言いたいことはそのことではなかった。正直、会うことに意味はなかった。