次第に緊張の度合いが高まり、心臓がバクバクいいはじめる。
「由美ちゃん?」
「うひゃい!」
しっかり声まで裏返っていた私にほほ笑みかけ、朝倉さんは到着を告げる。
「はい、ここが僕のお店。 さぁ、遠慮なく入ってくれればいいよ」
着いた所はヨーロッパの自動車部品を扱っているお店で、明るく、洒落た感じのショールームの隣に整備ブースがある。
自動ドアを開けて入ると、officeと書かれたドアの横に額入りの大きな写真が飾ってある。
あれは……私?…と、朝倉さんの若い頃……え?何で?どういう………
写真をみていると、次第に意識が薄れ始め、ふわりと浮き上がる感覚だけが最後に残っていた。
「はぁあーっ、やーっと出てこれた!」
山内由美の魂が抜け出た後、アタシ、池田詩織が収まっている。
「令、ただいま〜っ。 かなりのお待たせだね」
「おかえり。 いえ、どういたしまして。 待つのは詩織姫に慣らされたから」
アタシ達は、つい昨日まで一緒にいたかの様に、ごく自然に振る舞っていた。