いきなりアルが起きて、なんともいえない声をあげてしまった。
アルは自分の手をぼんやり見ている。
綺麗な手だと思った。すらりと細くて長い。私の学校の奴らに見せてやりたいわ・・・
私の手への熱い視線に気付いたのか、アルが顔をあげる。
「俺の手に何か?」
「綺麗」
・・・・妙な答え方をしてしまった。
慌てて付け加える。
「細くて綺麗だなーって思っただけよ。別にそれだけであって特に深い意味なんかないのよ?ただ口をついて出ただけなんだから」
いっきに喋る。
まるでこれ・・・
巷で有名な――ツンデレみたいじゃない。
余計恥ずかしくなった。
「綺麗か?」
アルは少し眉間にしわを寄せていた。
「この手を綺麗だと思うのか?」
「うん」
なんだか気まずくなった。空気が重い。
沈黙が嫌で私は口を開く。
「シャーナって誰?」
ちょっと気になってた名前。
寝言に出るくらい。
恋人かな?悪魔・・・じゃなくて天使にも恋人とかいるのかしら。
「なんで・・・知ってる?」
アルが真っ直ぐ、私を見る。
「さっき寝てた時・・・言ってたから。恋人だったの?」
「違う」
即答だった。ちょっとがっかりした。
「じゃあ何ー?それにもしかして好きだったんじゃないの?」
アルが少し、固まった。
「図星?」
返事はない。
「ねえ」
返事はない。
「ねえってば」
「 だ ま れ 」
怒鳴られた。
同時にイラッとする。
「怒鳴らなくてもいいじゃないのよ!」
「貴様に何がわかる!!?」
肩をつかまれ、壁に押し付けられた。
「お前なんかに・・・わかってたまるか」
間近で見るアルの顔は、悲しみが溢れてた。
その顔を見ると、なぜか私は悲しくなった。気付くと、涙が一筋。顔を伝った。
「・・・ごめん」
アルが私を開放する。けれど、私はその後しばらく、声を殺して泣いていた。