そんなこんなで付き合い始めて、一緒に住むようにまでなって…って早くねーか?!わたし。まぁ今はそのくらい彼にハマっちゃってる自分に私自身驚いてるんだけど。
いつまでも鳴り止まない携帯を、いつものようにそっと彼の枕元に近付ける。そしてまた目を瞑り、寝たフリをすると、
「ふぁ……。やっべ寝過ぎた。」
私がまだ寝てると信じてやまない彼は大きな体を起こしながら、私の頭の下の腕をゆっくり時間をかけて抜く。そんな不器用な優しさがたまらなく愛おしい。
まだまだ寝ぼけ眼と私の薄目が一瞬だけ合った後、彼は大きな鏡の前に大きなあぐらをかいて座る。私は寝たフリを続け、この後少しぼーっとして髪をセットする姿を後ろから見るのが今一番のお気に入りだ。
猫背のラインや延びた襟足、そして髪をふわっと掻きあげる時の微かな香り。彼を好きな瞬間のひとつ。
そして決まった頃合いで私は声をかける。
「おはよ…今日は早いね。」
「ん?あぁ、今度から遅刻したら単位やらないって教授がカンカンでさ。」
(カンカンって…。今時言うか?!)
ヒナタはたまに古い。下手すりゃ昭和。まぁこのギャップもたまらなく好きかな。
…でも彼は嘘を付いている。
寝ぼすけな彼がこうやってたまに朝早く出かける時があるが、こういう時、大抵授業に出るのは午後からだ。
…あれはニ週間前、学校での事だった。
私とヒナタは同じクラスじゃないのであまり授業がカブることはないが、1つだけ同じ般教をとっている。その授業を受けるために一緒に待ち合わせて教室へ向かっていると、後ろから、
「ヒナタぁ〜!ミキちゃーん♪」
一瞬とても大きな声に驚いて、二人の目が向かい合う。
「あっ、ユータ君。」
「何だユータかよ。お前一限発表当てられてたくせにサボっただろ?」
「いきなり親友に向かって何だはねーだろ何だはよー。つーかだって面倒臭いんだもん♪あ、ミキちゃん今日もかわいいね♪」
「ははっ…アリガト(笑)」
「面倒臭いんだもん♪じゃねーよ。教授にお前の事聞かれて、ごまかすの大変だったんだからなー。」
「さすが親友♪よし、後で学食おごってやる!」
「お前な…。」
明らかに軽いこの人は高野ユータ。茶色×金色のポイントメッシュにアシンメトリーな前髪で見た目も爽やかとは言い難い。