「まずは、おめでとうと言っときますかね」
オフィスの中で待っていた死神のクロガネさんは、幸せ一杯のアタシ達を見て祝ってくれた。
部屋にはもう一名、旧知の人物が張り裂けそうな程目を見開いて、アタシを凝視している。
「あ、熊ちゃんお久〜っ、詩織の事覚えてる?」
熊ちゃん、こと熊田哲司は令と同じ大学の、自動車部以来の付き合いになる。
「忘れるもんかい! …でもよ、詩織ちゃんが本当に生まれ変わるなんてなぁ。 俺ァ令のアホが『神のお告げがあった』と言い始めた時は、とうとう頭がイカレやがったかと思ってたぜ、マジでよ」
「相変わらず口わりぃよね、熊ちゃんって、アハハ」
渋〜い顔で話を聞いていた令を見て、アタシは思わず笑っていた。
熊ちゃんの言葉通り、令は蜃気楼のように突然あらわれたクロガネさんの助言に従って、令とアタシが初めて海へ行った時に撮った写真を、オフィスの正面に飾っておいた。
《二人の思い出》が魂の封印を解くキーワードだなんて、ちょっとロマンチックかも…