村上シンジはふと思い出して、開けた鞄からとあるプリントを取り出した。
例のサマーフェスティバルの招待状だ。
多少気になる事がある。
同じ秀才でも、シンジはシュンスケ以上に慎重だし、目端が効く。
新生を果たした生徒会・イジメ問題に関心ある会長―\r
ほんの僅かだが、しかし懸念すべき要素だ。
今更バレてる分けもないし、かりにそうなっていても、実質時効みたいな物だ。
だが、やはり気になる―\r
プリントを机に投げて、村上シンジは自分に向けて嘲笑した―全くこれでは俺が犯罪者みたいじゃないか?
皮肉な話だが、ナツは死んでからの方がこうしてイジメグループ達を時々不安がらせるきっかけを与える力を持ったのは、確かみたいだ。
なるほど呪いと言うのは実在するのか―\r
死せる孔明生ける仲達を走らす分けだ。
だが、やはり死人に口なしだ。
向こうの会長が敏腕・辣腕とは言っても、所詮は中一のガキじゃないか。
そんなの幾らでもたらしこめば良い―\r
仮に今いかなければ、かえって疑いを招くな―村上シンジはまたお得意の計算を始めた。
特に俺と、桂シュンスケと、俺達を仕切ったあいつがイジメ問題を語る会合から逃げれば、後々噂になりかねない。
中学時代は割と大っぴらにイジメを楽しみ・利用していたし、口うるさいネットや好事家がいつ騒だすか分からない。
『やはり行くか―行って、そこの生徒会長に俺がイジメを憎んでいる、と印象付けて置くか―』
村上シンジは結論を下し―\r
『そういやナツには従兄弟がいたというが―あいつの名字は多聞堀(たもんほり)・会長の名前は梅城(うめじょう)ケンヤだもんな。ハハッ、こいつは考え過ぎか』
村上シンジはプリントを鞄に押し込み、ようやく教室を後にした。