ヤス#141
「ほら…あそこに白いものがあるだろう」
ヤスは嘘八百を口にした。対戦相手の二人が、ヤスの指す方を見た。瞬間、ヤスが飛んだ。
人間の跳躍力を超えている。
ヤスはサッカーのボレーシュートでもするかのように男の頭に蹴りを入れた。
男は一蹴りで飛んだ。白目を剥いて倒れた。
砂の上にフワッと着地したヤスは、残った痩せ男を見据えた。
「ひっ!あわわっ…化け物…俺は…ほら、弱いから…何もしないから」
「早く病院に運んでやれよ」
「ひっ!うんうん…わかった。そうする」
ヤスはキビスを返した。
呆然と立ちつくす恭子と香織の手を引くと、車の方へ向かった。
恭子は何度も振り返り、男達を見た。してやったり、という風だ。香織はと言えば、教祖様でも見るような目つきでヤスを見詰めていた。
駐車場について振り返ると三人組がヨタヨタと逃げ去っているのが見えた。ヤスは二人の肩を引き寄せた。
「さっき、言った通りですけど…いいですか?」
恭子と香織は嬉しそうに頷いた。