ようやく、私は口を開いた。
「行きたくない…。」
「でも、行かないといけないんだろ?」
「分かんない。」
「行けよ。」
意外な康介の言葉だった
「東京なんて、羨ましいよな。俺も行ってみたい。」
「…。」
私は、返す言葉が見つからなかった。
「俺さ、そりゃ唯が行っちまうのは悲しいよ。でも、せっかく東京いけるチャンスが来たんだから、行けよ。唯、大人になったら東京行きたいって言ってたし。」
「それは、大人になってからの話で…。」
「いいじゃん。それに、向こう行っても、俺はぜってぇお前のこと忘れねぇし。」
康介は、うつむきながら言った。少し顔が赤かった。
「東京行っても、私、やってけるかな。」
「大丈夫だよ。多分な(笑」
「多分とか酷いよ(笑」
この後、二人でどうでもいいことを散々話した。
久しぶりに一緒に笑った。
「じゃあ、俺そろそろ帰るわ。」
「うん、またね」
「唯は帰らないのか?」
「もう少しここにいる。」
「そっか。…。あんさぁ、」
「ん?」
「俺、お前にちゃんと言ってなかっよな。」
また、二人の間に沈黙が続いた。私、こういう雰囲気苦手だよ…。
「唯、俺、お前の事好きだよ。それだけ。じゃな!」
あっと言う間だった。
まぁ、あいつらしいけど。でも、嬉しかったかな?
それから、一人でブランコに乗って、東京に行く事を考えた。たしかに、大人になったら東京行きたいって思ってた。でも今は早すぎるよ。まだ中1なのに。でも、今東京行かなかったら、一生行けなくなるかもしれないんだよ?…。でも、正直都会に行くのは怖かった。こんな田んぼしかないような町から、いきなり高層ビルばっかの所へ行くなんて…。どうしよ…。
‥…。
行こうかな……。
「唯!!!」
前を見ると、お母さんが立っていた。
「もう、探したんだから!」お母さんは、今にも泣き出しそうだ。
「ごめんなさい‥…。」
「心配したんだから。」
「お母さん、あの……東京行ってあげてもいいよ。」
「え?急にどうしたの?」
「まぁ、色々あって。」
「あら、気になるわね。でも、ありがと。まさか唯から行きたいだなんて…。」
「その代わり、帰りアイス買って。」
2へ続く