【6回無死1塁】
1塁走者の俺は南の投球と同時にスタートを切った。
伊野波がベースカバーに入る。
バントの構えをしていたアキはヒッティングの構えに変え、がら空きの三遊間を狙った。
バントシフトの為、ダッシュしていたサードの清和は打球に全く反応できなかった。
レフト前ヒット!!
3塁ベースが空いているのに気付いた俺は、失速せずに2塁ベースを蹴った。
清和が慌てて3塁ベースに戻る。
レフトからサードへボールが転送される!
しかし俺はボールがサードに送られる前に3塁を陥れた。
『セーフ!!』
藤城中ベンチが沸いた!!
これで無死1、3塁。
俺達にビッグチャンスが訪れた。
打席には2番白石。
犠牲フライでも一点!
スクイズでも一点!
俺はサインを見た!
サインは『盗塁』
南がセットから白石へ第1球目を投じた。
また、朝山中内野陣から
『走った!!』
の声が響いた。
チーム1駿足のアキは、簡単に2塁を奪った。
判定はストライクだったので、無死2、3塁でカウントは1ナッシングになった。
南が少し嫌そうな顔をしたのが見えた。
曾我端さんが再びサインを出す。
今度は『スクイズ』
だった。
走ってばかりの俺は息があがっていたが、1点をとるためにリードを広げた。
マウンド上の南は汗を拭う。
セットから白石に対しての2球目。
俺はホームへ向け走った!!
3度朝山内野陣からは
『走った!!』
の声が響く。
ヒッティングの構えからバントの構えに変えた白石は、球威のある南のストレートを1塁側に綺麗に転がした。
それを見た俺はホームへスライディング!!
間に合わないと思った南は1塁へ転送。
『アウト!』
これで2対1!!
ベンチに帰った俺はチームメイトから次々と頭を叩かれ祝福を受けた。
あと1点で同点!!
そして、1点差に迫った次の打席には3番、滝本龍夜がバッターボックスに向かっていた。