社会科見学当日。
僕はうきうきしながらバスへと乗った。
何しろ普段は雲の上の存在である彼女と一緒に行動出来るからだ。
それに同じグループの他の女子もそんなに僕の事をいじめる人じゃないし。
今日は楽しい一日になりそうだ。
*
バスは見学地であるマ〇ー牧場に到着した。
その日は小雨が降っていて僕達は傘を差しながらグループ別に牧場内を見学した。
「わぁーこの子かわいいー!!」
彼女は満面の笑みでヒツジの赤ちゃんを抱き上げている。
やばい…あのヒツジになりてぇ…
「この子フワフワで気持ちいよ。八幡も抱っこしてみなよー」
僕は彼女にグイッと腕を引かれた。
僕は顔を真っ赤にしながら彼女から赤ちゃんヒツジを渡されて抱き上げた。
「どうしたの八幡くん?
顔が真っ赤だよ?」
彼女は赤面する僕を不思議そうに見つめる。
しかも超至近距離で!!
「そっ…そうなの!?
別に何にもないよ。」
「何にも無いって何があるの?」
「……」
僕は何も言えなかった。
*
その後も彼女との会話は予想外に弾んだ。
そして僕はある事に気が付いた。
この5人グループは僕と彼女の2人。
そして他の女子3人に明らかに分裂している事だ。
僕達2人で盛り上がり3人はさっきからこっちをちらちら見て何やら話している。
なんだろう?
なんか…嫌な予感がする…
「八幡くん。
私さっきの建物に忘れ物しちゃた… 取りに行ってくるね。」
彼女はそう言うと忘れ物を取りに行ってしまった。
「あーあ愛しの〇〇が消えちゃたねぇー残念残念…」
彼女が居なくなった途端、3人組のリダー格の女の子が話し掛けて来た。
そして三人は僕を見てくすくすと笑っている。
「いつもは誰とも喋らないくせにこんな時だけいい気になってんじゃねぇよ!!」
「〇〇と喋れて楽しかった?
まさか〇〇があんたの事が好きだなんて勘違いしてるんじゃないよね?」
「〇〇があんたと喋ってたのはただ単に暇潰しをする為だよ。
あいつは男子と喋る方が好きだからね…」
え…?暇潰し…?
「今頃自分の筆箱を探すのに必死になってるんじゃない?
私達が盗んだ事も知らずに…」