空虚

霧生  2007-08-28投稿
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目の前に広がるおびただしい死体…。

その死体に群がる黒い鳥。

遠くに見える青い炎の柱。

廃墟。死体。炎。煙。赤い染み。飛び散ったなにか。

その光景をぼくは震えながら見ている。

足が痛い。血が出ている。身体中が痛い。

震えながら砕けちった破片を避けながらよろよろと歩く。

生きている人は周りを見る限り見当たらない。

血の匂いが鼻をつく。

猛烈な吐き気が込み上げる。

足が崩れその場にうずくまる。

「うっ…うっ…」

口元を押さえながら吐き気をおさえる。

目から冷たいものが頬をつたい落ちる。

「うっ…うっ…げほっ…」

泣きながら、吐き気をこらえる。

うずくまっていると、残骸を踏み潰す音が聞こえる。

グシャッ…バキッ…

その音がこちらに近づいてくる。

「うっ…うっ…だれ?」

顔をあげ音がする方を見る。

ギィ…ギィ…

機械音が聞こえる。

無機質な声が音のほうから聞こえる。

「生体反応を確認。」

目の前にあった残骸が上に移動する。

「……。」

綺麗なお人形さんが残骸を持ち上げこちらを見下ろしている。

身体が震える。

「対象を保護。」

手に持っていたコンクリートの破片を横に放り投げる。

ガシャン…

綺麗なお人形さんは青い色の瞳に赤い炎を反射している。

赤と青が瞳の中で混じり輝く。

頭が痛い。身体中が震える。吐き気が込み上げる。

「……。」
口を手のひらで更に強く抑える。

「残骸の破壊、対象保護を遂行。」

ザシュザシュ…

足音が近づいてくる。

「保護行動を妨害する対象物を破壊。」

ガシャン!!

ジュウ…ガキッ…!!

耳をおさえ、目を閉じる。

「残骸破壊完了。」

ザシュザシュ…

足音が目の前で止まる。

震える。

「保護。」

冷たい感触が頬に伝わる。

顔をあげる。

「大丈夫。安心。」

冷たい感触はお人形さんの手のひら。

お人形さんはぼくの目線に顔を合わせている。

「うっ…うっ…」

お人形さんの顔がにじむ。

「安心。安心。」

お人形さんはゆっくりとぼくを抱き上げる。

「うっ…げほっ。」

吐き気がひどくなる。

「保護完了。生体の外的損傷は軽度。内的損傷は重度。年齢は5〜8歳。」

ぼくを抱いて歩きながら、お人形さんはつぶやいている。



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