風紀委員達の構えた自動小銃の檻に完全に囚われてしまったイジメグループの頭上で照明が点灯し―\r
明るくなった体育館の左右の観覧席には、一群の人々がこちらを見下ろしている姿があった。
老若男女はみな一様に、梅城ケンヤと同じ目線をこちらに向けて来る。
怒りと憎しみと復讐心に満たされた突き刺す様な目付きだ。
『彼らが分かるかね、彼らが?』
演壇から悠然と、梅城ケンヤは三人に語りかける。
『君達は彼らにも縁がある―この俺よりも遥かに近くて濃い縁が。彼らはみな君達のイジメで自殺したり精神病院送りにされた生徒達の家族―そして遺族だ』
そして、梅城ケンヤは冷酷な笑いを浮かべた。
『君達に与えられた選択は二つだよ?ここで私の手で正義の裁きを受けるか、彼らの手で仇を討たれるか―どっちが良いかね?』
『ふざけんな!てめえ、頭おかしいんだろう!!!!』
たまらず桂シュンスケが、緑の長髪をふり乱して怒鳴り散らした。
『証拠はないだろうが!あ!?俺はなにもやっちゃいねえよ!!さっからなんなんだよ、変な言い掛かり付けてんじゃねえよ!!ぶっ殺すぞ、コラ…あうっ…』
事実言った事を実行してやろうと、演壇に彼は飛び付こうとした。
飛び付こうとした所を、風紀委員の繰り出す銃底と警棒でめった打ちにされてしまい、シュンスケの罵声は情けないうめき声に変わったが。
『君の気持ちは分かった。だが、お互いに誤解がある』
床にころげ回るシュンスケを横目に眼鏡に手をかけながら、村上シンジはまた、お得意の話術を駆使しだした。
『君がナツ君の自殺を無念に思う気持ちは分かる―だが、僕達だって悲しかったんだ。彼女の葬儀は君も行ったんだろうが、僕達は確かにあの場で、悲しみ、泣き叫び、そしてこれがイジメだったら絶対許さないと公言したんだよ?』
そして、両手を広げながら演壇に歩み寄り―\r
『だから君も、こんな事は止めたまえ。お互いの誤解を解こうじゃないか?こんな事をしたって、君が不利になるだけなんだよ?話せば分かる――!!!!!!!』
村上シンジの説得の語尾は、言葉にならない絶叫で締めくくられた。
およそ人間のものとは思えない金切り声が体育館を埋め尽す。
それはそうだ。
誰だって自分の片足がいきなり焼き払われたらそんな声をあげるだろう。