つがいのからすは今日も鳴く
山の麓の古寺で
鳴けば坊主が追いに来る
なれどからすは鳴き止まぬ
命を懸けて鳴き叫ぶ
恋に焦がれた二羽の鳥
居を構えしは寺の軒
つがいの想いは実を結び
我が愛し子を授かった
瑪瑙の瞳と銀の羽
震えながらも鳴く声に
つがいは身を寄せ微笑んだ
この子の勇姿を夢見つつ
一所懸命育んだ
その悪戯好きの神の御業か
山に潜みしあやかしか
我が家に戻ったつがいのからす
姿を見せぬ愛しい我が子
呼べど叫べど聞こえぬ応え
山のこだまが響くのみ
可愛いあの子がいないから
ただただあの子がいないから
つがいのからすは今日も鳴く
山の麓の古寺で
鳴けば坊主が追いに来る
なれどからすは鳴き止まぬ
命を懸けて鳴き叫ぶ