ヒマワリ畑から戻って来た僕らに、母さんが「葵ちゃん、これからご飯は毎日うちで食べたら?」と提案した。
おばさんが入院している今、あの花屋には葵しかいない。
一人で食事をするよりも、うちで一緒に、という母の意見に僕も賛成した。
「葵、明日から花屋始めるんだろ?」
夕飯のそうめんを啜りながら、明日からのスケジュールを聞く。
葵一人では大変だろうと、仕入れや開店準備を手伝う約束をしたからだ。
「うん…でも、ひーちゃ…日向くんも大変じゃない?」
「いや、大丈夫だよ。こっちは俺がいなくても回るしさ」
「おばさん、ホントに大丈夫?ひーちゃ…日向くんいないと、力仕事が…」
「全然大丈夫よ!日向一人いなくたって、私も案外力持ちだからね!…にしても葵ちゃん、言い辛いなら今まで通り、ひーちゃんでいいのに」
いちいち言い直す葵を笑いながら、母さんは『無理言わないの』という視線をこっちに向けてきた。
反対にアッサリ呼び捨てに慣れた僕を見て、僕が無理矢理呼び名を変えさせた、と思っているようだ。
僕が呼び捨てに慣れるのが早かったのは、まだ異性との壁がなかった小さい頃に実際彼女をそう呼んでいたからで、葵がなかなか慣れないのは、小さい頃から『ひーちゃん』だったからってだけの差。
俺が言い出したわけじゃないのに…と若干ふて腐れながら、僕は最後のそうめんを喉に流し込んだ。