航宙機動部隊・前史2

まっかつ  2007-09-03投稿
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それは様々な矛盾・相克・解離・混乱が一挙に噴出した形の、長い長い動乱の時代を将来した。
科学技術の暴走・あるいは迷走に、人類側の対応は明らかに後手後手に回った。

やがて、西暦23世紀の【テクノロジー・クライシス】をピークに、宗教界の統合がようやくこの迷いに一定の結論を下した。
最終的に人類は、保守的な文明の延長線上に幸せを見い出すべく、宇宙への進出を始めるのだ。
だが、宇宙開発は遅々として進まなかった。

当時の人口は九0億人前後で長らく落ち着いていたが、その内、月面や軌道都市に住む者は、まだ五0万人に満たなかった。
それでも火星の入植計画が立てられ、それはおよそ百年後の火星共和国の建国に繋がる事になる―\r
だが、新たなる対立も生まれた。
急速に興隆する火星共和国は、地球から大勢の【異端者】を吸収し、やがて次なる宇宙文明の総本山と自称するに到ったのだ。

これが地球側を痛く刺激した。
第二のテクノロジー・クライシスとなりかねない。
こうして、保守的な地球と革新的な火星との間に、三次に及ぶ地火戦争《スペースウォー》が勃発した。

物量で圧倒的な地球だったが、既に宇宙分野では火星に大きく水を開けられていた。

戦いは地球の大軍を打ち破った火星機動部隊が、地球への反撃に出たが、月を中心とした要塞線に阻まれ、どちらも長期戦に苦しみ始めた。

地球側は、月面や宇宙でしか製造出来ない人造レアメタル類の供給路を火星軍に抑えられ、早くも経済危機を迎え、火星側も戦いによる人的資源の損耗は、最早戦線を維持出来ないまでになっていた。

痛み分け―これが、人類史上初の宇宙戦争の結果だった。
講和が締結され、それはやがてこの時までに大気造成・部分的可住化が成立していた水星・金星・アステロイドベルト入植者同盟・それに全ての人工航宙植民体が参加しての太陽系統一へと繋がった。

西暦二四0一年・月面における地火戦争宙際講話条約の締結と共に、こうして誕生したのが太陽系連邦だった。
それは火星の急進性と、地球の保守原理主義との妥協の産物であった。
首都は火星に置かれたが、代わりに彼等は伝統的な倫理・宗教観を守る事を誓約し、事実それは良く遂行された。

どの道宇宙文明の主役は火星に移っていた。

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