緑の惑星.11

金田七耕助  2007-09-04投稿
閲覧数[613] 良い投票[0] 悪い投票[0]

 地球を円盤で脱出してから約一時間経って、偽アイザックが口を開いた。
「後二時間もあれば、緑の惑星に到着する。以前にロケットを着陸させた場所に降りる。俺たち二人だけで、本物のアイザックとリチャードが居る建物内に入って、入れ替わる。それまでの間は家族を円盤内で待たせておいてくれ。」
 私は無言でうなづいた。家族達は室内で寝ている。私は椅子に座ったまま居眠りをした。先のことも後のことも悩む気力はない。
 それから二時間が過ぎた。室内画面で緑の惑星を見た。気のせいか、その緑は以前と比べて、色褪せて見えた。
間もなく、円盤は静かに着陸した。約束通り、偽アイザックとリチャードだけが円盤を出て、私は家族達と残った。
 一時間待っても、二人は帰って来なかった。私は他の者達を残し、一人武器を持ち、円盤を出て古い建物のある所に向かった。
 建物の手前で、足は止まった。
 先に出た二人が倒れていた。声をかけたが、ほとんど動かない。偽アイザックの口がわずかに動いた。
 「俺たちは死ぬが、生き残ったなら、殺し合いの無い平和な世界を築いてくれ。頼む!」
 それだけを言い残すと目を閉じ、動かなくなった。次第に彼ら二人の顔は崩れ、枯れた植物に変わった。
 そのとき、建物の中から本物のアイザックとリチャードが出てきた。
 「生きていたのか!いったい何があったんだ?」思わず私は叫んだ。
 リチャードが答えた。『十日位前に、他の惑星からの平和の使者を名乗る者達が来て、ここの惑星人と平和条約を結んで帰って行ったが、その後、この緑の惑星人達がパタパタと倒れ始めた。植物を枯らす伝染病をばらまいて行ったんだと思う。無意識かもしれないが。』
 その菌で、偽のアイザック・リチャードも枯れて死んでしまったのだ。
 …それから長い時間が過ぎた。私たち地球人3家族は、この緑の惑星を新天地として開拓し、新しい歴史を築くべく、生き抜いている。
 今頃、私たちの故郷である地球は、誰が支配する所となったのだろうか。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 金田七耕助 」さんの小説

もっと見る

SFの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ