目が覚める。目の前には好きな人の背中。背中を向けられてるのがちょっと悲しい。以前はぎゅって抱き締めててくれた。
そう…付き合っていた頃は…。
亜弥(あや)は彼を起こさないようにそっとベッドからでた。
「ん…」
彼が寝返りをうってうっすら目を開けた。
「あ、ごめん起こした?」
「うん…」
「圭太(けいた)今日休みでしょ?ゆっくり寝てなよ。」
「ん…起きる。」
圭太はそう言ってゆっくり体を起こした。
「今日出かけるから…」
「そおなんだ?」
誰と?なんて聞かない。あたしたちはもう付き合ってないから。
あたしたちが別れたのは半年前。1年付き合ってたけど結局しっくりこなくて「友達」に戻った。けどまだあたしは圭太のことが忘れられなくて、関係を続けている。詮索も束縛もない関係を…。
圭太は束縛を嫌った。あたしは束縛をしてしまった。
そんなすれ違い。
「あのね…」
「ん?」
「…やっぱなんでもなぃ…」
いつもここで途切れてしまう言葉。
「最近あのねってめちゃ?言うよな?」
「そぉかな?」
「なんか言いたいことあるなら言えば?」
「…無いよ。なんでもないから。」
「そっか?」
「うん…。じゃああたし仕事あるからもう行くね。」
「おう。じゃぁな」
圭太の部屋を出て駅までの道を歩く。朝日がまぶしい。よく晴れた空を見上げても心のなかにはずっと曇ったまま…圭太とこんな関係になってから…ずっと。
あのね…この先がずっと言えない。
言ったところでもうどうにもならない。お互いを失った寂しさをお互いで埋める。
戻ることも進むことも出来ない。
ただただ寂しさだけが募っていく。
付き合って1年たった頃お互いの気持ちが分からなくなった。信じる事も、突き放すことも出来なかった。
好きだから…。
別れてからも寂しくてお互いを求めてしまう。
好きだから付き合わない。
『友達以上恋人未満』
それでも亜弥は良かった。好きな人とどんな形であれ一緒にいられる。それだけで良かった。