『さよーならー』
小学1年生の始め頃の授業は、とても楽しかった。でも、家に帰るといつも一人。私の両親は近くのビニールハウスで働いている。そのため、朝7時30分から昼までは家には帰って来ない。そして、お昼ご飯を食べて1時から4時30分頃までも働いている。私が幼い時から2人ともビニールハウスで仕事をしていて、1人で留守番をしていることが多かったのだ。
いつも通り学校が終わって家に直行。鍵を開けて中に入るとやっぱり真っ暗。
でもその時は違った。小さなしっぽをちぎれそうな程振って待っていてくれるエルフがいた。
いつも1人で淋しかった私の唯一の癒しだったよ。
『エルフただいま〜。』
ゲージから出してあげると嬉しそうに広いリビングをかけづりまわる。それを私が鬼ごっこのように追いかける。それだけでも楽しかった。
『そろそろ何か技を身につけさせたいね〜』
暑い暑い夏休み。外では私達にますます暑さを与えてくれる蝉の声。
その頃のエルフは大分体も大きくなってたくましくなっていた。
『せめてお座りとお手とおかわりぐらいはねぇ。』
日陰で涼むエルフを見て話す私と妹。
そして始まった特訓。片手にはエルフの大好物のジャーキー。匂いを嗅ぎ付けて近づいて来たけどお構いなしに…
『お座り!!』
無理矢理お尻を床に押し付ける。叫び続けること5分。ついに成功した。
『おーー!!』
思わず拍手してしまった。握りしめていたジャーキーをあげると、私の指にまで噛り付いてきた。
同じようにお手もおかわりもふせもあっという間に出来てしまった。
『頭いい〜!!』
犬は頭がいいと聞いていたけど本当だった。
エルフ。私ね、もっといろんなことしたかったよ。もっと一緒に走りたかったよ………