九重モエ達を乗せたタクシーは抜け道を伝いに伝っていた―\r
『これからどうしますか?』
タクシーの後部座席左側から、九重モエのボディガード・霧島ユウタが鋭い目を外に配りながら、行き先を尋ねた。
『このままY区方面に向かいましょう。第一中学校のテリトリーに脱出する方が近道です』
第三中学校がどれだけ強大でも、いくら梅城会長が絶対権力者であっても、他校のテリトリーに逃れればこの危険極まる【ゲーム】は終わる筈なのだ。
程なくして、タクシーはとある私鉄の高架にまでたどり付いた。
第一・第三中学校を隔てる、ここが国境なのだ。
モエと霧島は、窓を開け辺りを確認して―ホッと胸を撫で下ろした―\r
幸い第三中学校の追手はまだ来ていないみたいだ。
モエに促されるままに、タクシーがガード下をくぐると、第一中学校が設けている検問所に差し掛かった。
二本車線の中央に簡易ゲートが置かれ、向かって右側にはプレハブ式の詰所が建てられている。
―助かった
モエと霧島は、ようやく虎口を脱したと確信した。
後は検問所の門衛に事情を説明して、通過を許可してもらえば、一条フサエの命は助かるのだ。
『これはお疲れ様です。私は私立k学院会長・九重モエですが』
寄って来た検問員にモエは挨拶をした。
『実はとある女子学生が追われてまして、彼女を安全な場所まで護衛している所なのです―お手数ですが、通過させて下さい。詳しい事情は追って説明させていただきます』
だが―\r
『申し訳ありませんが、あなたたちを通す分けには参りません』
検問員の対応は、完全な拒絶だった。
『そこの真ん中に座っている一条フサエと言う学生が、体育館で二人を殺し、現在逃亡中だとの知らせが第三中学校から入っております―我々は犯罪者に加担するつもりはありません。おひきとり下さい』
―!
余りの事態に、気丈なモエですら動揺を隠せなかった。
梅城ケンヤの魔手は他校にまで伸びていたのだ!
『それは誤解です!彼女は殺し合いに巻き込まれて―貴校は騙されているのです!分かりました。貴校の―太田会長に私が連絡を取ります』
霧島が車を降りて後方の警戒に当たる中、九重モエは携帯を取り出した。