僕の回りを覆うこの世界は、どうすれば明るく晴れるのだろう。
休日の午後、1万人以上が詰めかけているサッカーの試合。
終了まで後わずか、1対1の同点でロスタイムというところ。その選手は相手ゴール正面で味方からボールを受けた。敵の守りは、まだ間に合っておらず、多くの人がシュートチャンスと感じていた。
「撃てー!」サポーターの誰もが思った次の瞬間、彼はフリーの味方にパスをした。
大きなため息に包まれるスタジアム。結局その後、フリーとなっていた選手は、敵に追い付かれ守りきられてしまった。
試合終了のホイッスルがなり、騒然とするスタジアムを僕らはあとにする。
「なんで、最後のところシュートしなかったのかね?」
誰もが素直に感じる疑問を友美は僕に投げかけてきた。
「なんでだろうね。シュートコースがなかったのか、自信がなかったのかな。あれを撃ってれば、決まらなくても少しはこっちも満足したのに」
そんな風に試合の感想を話ながら、軽く食事をして家路につき。友美との初めてのデートは終わった。
彼女は高校時代のアイドルだった。当時から抜群にかわいいと評判で、学園祭の学年人気ランキングではかならずベスト3にランクインしていた。三年間、同じクラスだったし、会話をした事はあったが、仲が良かった訳でもなく、僕にとっては少し遠い存在の子だった。
そんな彼女とデートするとは三ヶ月前には想像もしなかった。
すべては高校卒業後のクラス飲みが始まりだった。