ヤス#149
弘子の嫉妬心は大きな愛情で包み込まれて姿を消した。
「そうと決まれば…女将よ」
「はい、親分さん…何か?」
「女将は俺と付き合え。ヤスは早く上がらせろ。良いな」
「まっ!私が親分さんと?私は人妻ですよ」
「大将と俺は杯を交わした義兄弟だ。嫌とは言わさんぞ。うあっはっはっ」
「はいはい。朝まで飲み明かしますか」
「おうっ。久しぶりに女将とシッポリ…とな。何をしてる。ヤス、着替えて来ないか」
「そうしなさい。やっちゃん」
「良いんですか?女将さん」
「ほら!親分さんの気が変わらないうちに…純子さんをさらって行くのよ」
「そうよ、やっちゃん。早く私をさらって頂戴!」
ヤスは親分に深々と頭を下げると走って寮に向かった。
「ふうっ…ありがとうございます。親分さん」
「うあっはっはっ!流石に驚いたぞ。この竹内の嫁を一晩貸せと言いやがった。大したヤツだ」
「理由があるんですよ…きっと、大事な理由が。純子さんがやっちゃんの母親に似てるからって…きっと理由があるんです。あの子を信じてやって下さい」
「うむ。だから貸すんだ。純子。今夜はヤスの母親になりきってやれよ」
「あら…恋人ではいけないの?」
「何故だ?」