母はシーツで包んだエルフを抱いて、3人でタクシーを待った。
やがてタクシーが来て、家まで送ってもらった。その間、ずっと無言だった。
家に着き、母が
『お墓つくっちゃらないかんね。』
と言った。家の裏にまわり、少しひらけた場所にお墓をつくることにした。
雑草をひき、エルフが入るくらいの穴を掘った。そこへ、大切に大切にエルフを寝かせた。エルフの散歩に使っていた蛍光色のリードも隣に置いた。
『これが最後のお別れやけんね。皆でありがとうって言おうね。』
母が言い、3人が1人ずつ言った。
『ありがとう。』
手を合わせてお別れをした。
『じゃあ、土、かけよう。』
一気に、もう出なかったはずの涙が溢れてきた。3人共声を上げて泣きながら、土をかけてあげた。それが1番悲しかった。少しずつ隠れていくエルフ。
『嫌だぁ…』
小さなエルフの体はすぐに土で見えなくなって、もう二度と動いてくれなかった。お墓のまわりを大きめの石で囲って、お線香と水とドッグフードをお供えした。
家に入ると私はトイレに駆け込み、タオルで口を押さえてぼろぼろ泣いた。なんでこんなに早く死んじゃったの?もう少し、あとちょっとでいいからそばにいさせてよ…
部屋には、何も入っていないゲージ。あちこちに落ちている白い毛。まだまだたくさんあるドッグフード。一緒に祝ってねって買っておいた、エルフが大好きだった缶詰。
エルフがいなくなったのは6月10日土曜日、私の誕生日の一週間程前だった…
気分転換に散歩に出掛けた。エルフと一緒に歩いた道。何も変わっていない。雨上がりの空を見上げると、青空にいくつものちぎれた雲が浮かんでいた。そこには走っているエルフがいた… エルフ、私、忘れないからね。重いって思われるかもしれないけど、君と過ごした日々大切にするよ。