『夏 15』
その時 窓から宏介が歩いて来ているのが見えた。
少しずつ宏介が近づいてる。
宏介もアパートの前の騒がしさに気がついたようだ。
僕は宏介と決めていたグッドサインを刑事達から見えないように 窓の方へ出した。
一瞬 宏介と眼があった。
宏介はそのサインを見ると軽く手を挙げ振り返るとゆっくりと歩き出した。
前に僕に言ったように。
ゆっくりと。下を向いて。
他の部屋をあたっていた刑事が隣の住人と宏介を間違っいた事を主任と呼ばれる刑事に話し してる。
「緊急配備だ。」
意味が分からない僕にも その何とか配備が宏介の不利になる事は解り 僕はとにかく暴れた。
テレビを倒しカーテンを破り 窓ガラスを自分の腕で割った。
すぐに刑事に取り押さえられたが腕の出血を見て 主任と呼ばれる刑事が 命令を変えた。
「とにかくすぐに救急車だ」
僕の勝ちだ。
そういえば ボーリングで宏介に勝ったな。 なんてその場に相応しくない事を思い出していた。
僕の勝ち。
後から刑事に聞いたのだが あの騒ぎを聞いて宏介に逃げてもらおうと僕が騒いだのだと思い その後の捜査は あの騒ぎが聞こえたアパート周辺になったそうだ。
僕は宏介の共犯として逮捕された。
薬物検査をされ再逮捕。
初めての事ばかりだが 女の人に頼まれたと刑事達も知っていた 弁護士の先生が来てくれ 色々とアドレスをしてくれた。
「僕は宏介に騙されていただけで何も知らない」
そう話すように。
弁護士の先生からは色々と話しをして貰ったが、僕からは一つだけ伝言を頼んだ。
「先生、その先生を頼んでくれてお金も出してくれた女性によろしくと。
それともう一つ、その人の彼氏に僕が面会の時にこうしてたと」
勿論 グッドサインだ。
先生は僕が初犯であり宏介と云う売人に騙されいただけなので執行猶予ですぐに出れるからと。それと必ず伝えとくよ。とグッドサインを出して帰っていった。
最終回に続く。