PM5時・第三中学校職員室―\r
『何!?私立K学院・副会長が!?』
設置された緊急対策本部で、風紀委員会長・赤木マモルは突然の知らせに眉をひそめた。
北に隣接するk学院から風紀委員会約30名を率いて、向こうの副会長・安東タロウが【侵攻】して来た―\r
学区境の検問から、そう連絡が入ったのだ。
『k学院ごときのへなちょこが!我が校で狼藉(ろうぜき)を働くだけでなく、侵略の野望まで持っていたか!くそっ、目にもの見せてやる!!』
赤木マモルは激怒して、部下達に司令を下した。
『C班・D班を差し向けるぞ!もし連中が何か仕掛けて来たら構わん!蹴散らしてやれ!!』
そして、既に特別調査取締班と共にタクシー二台に分乗し、一条フサエ追撃に向かっている梅城ケンヤに事態を伝えた。
『―そうか、K学院が動いたか』
タクシーの後部座席で、着信を告げた携帯を取った梅城ケンヤは、その知らせに別段怒りも失望もしていない様子だった。
【はっ。C班・D班、併せて28名を向かわせました】
赤木マモルの報告から、ケンヤは早くも真相を見抜いていた。
―こいつは囮だな
だが―\r
『その件は君に委せた。恐らく向こうから撃ってくる事は無いと思うが、引き続きやつらの監視を頼む』
【はっ】
風紀委員会は校内治安・学区の安全保証が仕事だ。
仮に陽動だとしても、【なぜ勝手に動いた】と責める分けにはいかない。
実体はともかく、タテマエ上あれは公的な治安組織なのだ。
一条フサエを殺すために学区防衛まで放棄しろとは、さすがに言えない。
それに―\r
梅城ケンヤは座席の左右を見回した。
九重モエら三人位、俺達だけでも十分だ。
タクシーに乗り込んでいる生徒達は、ケンヤ以外全員白い学ランで身を固め、日本刀で武装している。
会長就任と同時にケンヤが設置した、これが【特別調査取締班】だ。
銃器こそ使わないが、風紀委員会の中から、特に格闘戦に秀でた生徒だけを集めた【精鋭部隊】なのだ。
この異様な出で立ちの一団こそ、梅城ケンヤの【切札】なのだ。
彼らの力があれば、近隣の学校の一つや二つ攻め落とす位、造作もない。
増してや、幾ら強いとは言え、九重モエ独りだけで何が出来る―\r
ケンヤは勝利を確信した。