勇はその後も佳奈美を探したが匂いも途切れて完全に見失ってしまった。
最早単独での捜索は不可能と判断した勇は応援部隊を要請する為に本部へと無線で連絡しようとしたが…
「ザーザー………」
「反応無しか……」
何故か最後の望みである無線までもが繋がらなかったのだ。
『仕方ない…今日はもう遅いしここで野宿するか…』
*
「はぁ…はぁ…」
佳奈美は返り血で迷彩服は真っ赤に汚れ、紙は乱れ、汗をダラダラとかいている。
目の前には先程殺した後頭部が破裂して白い脳味噌が露になっている死体が転がっている。
「また…殺してしまった…
また…
また…」
佳奈美は口をポカンと開けて小さい声で呟いている。
充血した緑の瞳から再び涙が流れた。
「う…うぅ…うぅ……」
佳奈美は嗚咽を漏らすが口元は吊り上がっていた。
「ふふふ…フフフ…ハハハ…」
佳奈美は狂った様に笑い出して再び森の深い闇へと消えて行った。
「勇ハ…私ノモノ…」
そう言いながら。
*
伊豆半島は立ち入り禁止区域である為、高圧電流の流れるフェンスと政府軍の兵士達により24時間体制で監視されていた。
そしてその入口の一つである熱海郊外にあるこの場所で異変は起きていた。
フェンス際には大量のオニ達が集結し、雄叫びを挙げている。
そして監視施設の中でも異変は起きていた。