squall 1

 2007-09-13投稿
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「…く………あ…いざわ……さん!……相沢さん!」

手を握られていると認識したと同時に脳天から背中に重く鈍い痛みがあるのも分かった。
手を握っている人物を認識するまでに時間がかかったのは痛みのためだろう。

「沢田………?」

彼女が泣いている姿など初めて見た。
職場ではどこのオフィスにも一人はいるお茶くみ係が、今は目を伏せ、俺が病院に担ぎ込まれた現実に恐れおののいている。

「なんでこんな……自分で命投げ出すのは最低野郎だって、相沢さんが言ったんですよ!!」

泣きながら言われたために聞き取りづらかったが、誤解されているのは分かった。

「違う…んだ、小林…課長に…突き落とされて……」

沢田の隣にはトレンチコートを着た見知らぬ男がいた。

「気がつきましたか、警察です。その小林というやつは今どこに?」

刑事だったらしい。
沢田は社にいるであろうことを警察に言うと、俺の手をいっそう強く握った。

「お願いします…!」

沢田の声を背に刑事は病室を後にした。

「こんな………本っ当に、心配したんですよ!!私、営業の手伝いに出てて…帰ってみたら会社の前に救急車が止まってて…」

「沢田……静かにな」

沢田は俺を睨みつけたが、ベッドに顔を伏せ声を殺して泣いた。

「ごめん。ごめんな。…てか、嬉しい。……俺のこと、そんなに心配してた?」

「相沢さんって、鈍感過ぎ。もう知りませんよ!?」

それでも俺は彼女を置いて死ねない。
せっかく出会えた大切な人を置いてなんか。

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