私立K学院生徒会長・九重モエにナツの事を指摘されて、梅城ケンヤの心は乱れに乱れた。
だが―\r
『見せかけの人間性だの善意や同情だの、あいにく俺は―とんと興味がないね!』
油汗を流しながらも、ケンヤはやはり己の復讐心に忠実であろうとした。
『君こそ本当に信じているのか?そんな理想がいつ実現した?いつ守られた?誰がそのために命をかけた?誰がそれを正論としてまともに政治や法律に反映さした?全ては逆―逆じゃないか!』
そして、モエの大きな赤リボンの横から顔半分だけを出して、怯えきった目付きでこちらをのぞき込んで来る一条フサエに指をさし―\r
『そいつは今まで何人も自殺させ、精神病院送りにさせた極悪人だぞ!?だが、誰も罰しない、非難もしない!ただ父親が要人だからと言うだけで、大の大人が、名のある組織が、勢威を恐れ、甘い汁を吸いたいがために、ひたすらおもねり媚びへつらい、どんな悪事も許してきただろう!これがな、現実なんだ、いや、真実なんだよ!』
ここで、一条フサエは意外な行動に出た。
いきなりその場に膝を付いて
『悪かった、私が悪かったわ。だから許して―許して下さい』
泣きながら土下座したのだ!
完全に演技だ。
こうやって彼女はイジメて自殺させたナツの葬式で見事に『親友』として哀しむ振りをしていたのだから、そう疑われても仕方がない。
ケンヤも、そして九重モエすらも、その姑息さ卑劣さはお見通しだった。
しかし―\r
『私とてイジメもイジメグループも許せません―ですが、今こうして目の前で誰かが命を奪われようとするのを黙って見過ごす分けにも参りませんわ?』
九重モエはそれでも信条を譲る事はなかった。
『出来れば、貴方とは闘いたくないのですが…』
梅城ケンヤは何重もの怒りに顔を引きつらせた。
『結局君も同じだな!イジメた側の肩を持ち、イジメられた者何かトカゲの尻尾切りか!強いヤツの命は守るが、弱いヤツは足手まといだから見捨てるんだな!どれだけ酷い事をしてても命さえあれば人権はあるが、死んだり殺されたりした人は『死人に口なし』だから放っとけ、そう言う事かよ!!』
『違います!!!』
九重モエの否定は、ほとんど叫び声になっていた。